九州の国立博物館

この日の晩、『Re-interpreting the Past for the Future: Japanese Art Collections and the Challenge to the Museum』というセミナーを事務所で開催しました。
九州国立博物館でキュレーターを務めていた(たぶん)三木氏と、大英博物館日本部門のティム・クラークが発表をした後、V&A博物館の Director of Learning & Interpretation (学習課長、という感じ?)デービッド・アンダーソンが司会でQ&Aを行いました。
九州国立博物館は新しい博物館で、「日本文化の形成を、アジア史的観点から捉える」というユニークなコンセプトを持っているそうですが、他の国立博物館と圧倒的に異なる点は、来館者と博物館とのinteractionインタラクティブ性をひたすら重視しているところではないでしょうか。三木氏の発表で写真映像を見ただけですが、まるで「恐竜博」か何かかと見紛うような賑わい。子供の目線に立った様々な工夫が成功している様子がわかります。子供の頃から博物館になれ親しむことが、結局は将来の博物館にとっての「顧客」形成、支持層の拡大とレベルアップににつながるという発想は、従来の「見たければ見に来給え」的な博物館の姿勢とはまったく逆と言ってもいいでしょう。 もっともこれは、国立博物館が独法化したこととも無縁ではないでしょうね。また建物から新しく作るが故に、例えば普段は見ることのできない保存修復作業の様子を廊下に面して穿った窓から見学できるなど(あの窓、他の博物館んも欲しいですよね〜)、面白い工夫を盛り込むことも可能になったようです。
一方のティムは、先月リニューアルオープンした大英博物館の日本セクションの特色について発表。私も2度見に行っていますが、こうやって改めて説明を聞くと、また新たな発見があっていいですね。
という感じで、個人的には楽しめる内容でしたし、「面白かったです」という声も来場者からたくさん聞きました。しかし、企画者である同僚は内心複雑だったそうです。
なぜならば、今回は単に日本の面白い博物館を紹介するための会ではなく、博物館と教育という側面をもっと話し合ってもらいたかったのだと。だからこそV&Aの学習課長わざわざ司会に持ってきたのに、と。三木氏もティムも教育ではなくキュレーションの専門ですから、どうしても展示の話になるし、質問のほとんども教育に直接関係することではありませんでした。
主催者の意図とは離れたところで成功するというのは、イベントをやると時折発生することではありますが、ちゃんと冷静に分析しているあたり、偉いなぁ、と自分の同僚ながら感心。ま、100人近いお客さんが来てくれて、かなりの人が満足して帰っていったのですから、成功したことには変わりないでしょう。

ところで独法化と自分で書いて思い出したのですが、独法になってからのほうが政府の管理が厳しくなる一方、どんどん締め付けられる一方です。かといって独立するように支援してくれるわけでもありません。こんなの独立行政法人じゃないじゃんと思うことしきり。誰かその矛盾を政府に指摘してくれないでしょうかねぇ。