CSA

今晩、ICAでひとつ映画を観てきました。
タイトルは『CSA: Confederate States of America』
http://www.ica.org.uk/index.cfm?articleid=15101
日本語にすると「アメリカ連合国」?(あ、英辞郎にも載ってました) もし、アメリカの南北戦争で南部(Confederates)が勝利していたらその後のアメリカは、世界は、どうなっていたかという、歴史の「What if...?」の検証を試みた映画です。それもただのドキュメンタリーではなく、全編がイギリスのテレビ局が制作したアメリカ連合国の歴史を振り返るドキュメンタリー番組「C.S.A.」の体裁になっていて、合間には色々なCMも入ります。いわば偽ドキュメンタリー。
番組「C.S.A.」が存在する世界でのアメリカ連合国では、奴隷制は現代まで継続し、奴隷(有色人種)をいかにコントロールするかが社会的な命題。第2次世界大戦前は南アメリカや太平洋を含む広大な帝国をプランテーション奴隷制によって築こうとし、戦中はナチスドイツと同盟し、ユダヤ人の抹殺を考えるヒトラーに対して、時の大統領は奴隷として使うことを提唱する。戦後は奴隷制に反対する各国から経済制裁を受けるが、そんな時でも唯一の見方は奴隷供給源であるアフリカ諸国。南北戦争直後から政治亡命者や逃亡した奴隷の行き先であったカナダとは冷戦状態に陥り、逃亡防止のためのベルリンの壁ならぬ綿の壁(南部プランテーションの主要産物であった綿にかけて)が国境に沿って築かれる。
これが良くできてるんですよ!作家と大学教授のコメントを要所々々に入れながら話の流れを作る構成で、もちろん架空の作家と架空の大学の教授なんだけれども、本物らしく見せてま〜すというスキをあえて排除している。CMにしても、番組予告あり、アニメーションものあり、テレフォンショッピング風(もちろん奴隷が売ってる)のものあり、ディテールまでとっても凝っている。導入部分ではどこまでが作品紹介でどこからが映画なのかわからなかったくらいです。
全体としては、奴隷制にウェイトが置かれすぎているようにも思いましたが(スパイク・リー製作と最後にテロップが出てちょっと納得)、ひょっとしたらあり得なくもなかったかも、と思わせるだけのものはありました。他方、南部が勝っていたとしても、奴隷制撤廃を唱える人がリンカーン大統領以降ひとりも出なかったか、人権運動が発生しなかったかどうか。それはそれであり得なかったんじゃないかなと思いました。
また、これをアフリカ系の人が見たら絶対むかついて耐えられないだろうなぁと思いつつ、自分がアメリカ文化をもっとよく知っていたなら、もっと理解できたのではないかと思います。大人になる前に3年間住んでいただけでは見えてこないものってたくさんありますから。でも小学校の時に、国旗を見て胸に手をあてて「I pledge allegiance to the flag of United States of America..(中略)...and justice for all, amen」というPledge of Allegianceをクラス全員で暗誦っていうのを、非アメリカ人の生徒でも有無をいわさずやらされたのは今も覚えています。7〜8歳でそのことに疑問を感じるような権利意識は全くありませんでしたが、今思うとかなり強引ですよね。あ、それで映画の最後のシーンにはまさにそういう、小学校の教室で子供たちが暗誦しているのですが、「I pledge allegiance to the flag of Confederate States of America..(中略)...and justice for all the whites, amen」になっていました!恐。
あと、良くできてるなぁと思ったのは、南北戦争ロミオとジュリエットみたいなロマンスものが大人気になり、ミュージカルにもなった、という設定で、そのミュージカルのシーンが紹介された時。まるで本物のミュージカルの1シーンでした。あと、真珠湾攻撃の後、アメリカは日本本土の京都を爆撃した、ってのもウソですよね。その一行を聞いて、この映画、ものすごく細かいところまでもっともらしいウソになっているんだなぁと感心してしまいました。
日本で上映される機会があったらぜひどうぞ(それともひょっとして日本のほうが先に上映してたかも?)