解剖、サムライ、家族愛。 〜テレビ番組

年末からとんとテレビを見なくなっていたのですが、最近いくつか見て衝撃を受けた番組をご紹介。
① Autopsy(チャンネル4)1月16日〜19日 午後23時05分〜
たまたま同僚に録画を依頼されたのでじっくり見てしまいましたが、その名のとおり「解剖」の番組です。観客のいるスタジオに、実際の人間の検体を持ち込み、目の前で解剖をするという、驚愕の内容です。メスで皮膚を切り、内臓を取り出します。医者の手元はもろアップで映ります。実物の人体模型役のモデルも登場します。当然のように全裸です。本当に放送コードに引っかからないのでしょうか。
しかも1体を1時間延々と解剖するだけではありません。私が見た日のテーマは「老い」でした。人が老いると、脳は、内臓は、骨はどのような状態になるのか。まずは老人と若者の検体を、なんと丸ごと横から一文字に切って「中身」を比較(これは登場した時点ですでに切ってありました)。ぶったまげました。最初は人型の模型なのかと思いましたが本物です。そしてメインイベント、解剖実演の時間へ突入。検体は94歳で老死なさった女性。直接の死因を解剖してつきとめる、という目的が設定されます。そして本当に本当に、解剖してゆくのです。解剖用のナイフってほんとによく切れるんだなぁ。具体的に何が起きたか、ここに書くのはやはり生々し過ぎるのでやめておきますが(でも検体は血抜きをしてホルマリン漬けされていたので、血ドバー!ではない)、どうしてもご覧になりたい方はテレビ局のウェブサイトへどうぞ。本編が見れるようです。http://www.channel4.com/science/microsites/A/autopsy/index.html
このシリーズ、全編を通じて2名のお医者さんが出てきます。ひとりは外国人(ドイツ人?)、この人がほとんどの実技を行いながらその作業のひとつひとつを「では、胴体を開いていきます(ザクザクザク)・・・」とかなり訛りの強い英語で説明していきます。手術着を着ているにもかかわらずソフト帽をかぶっています。ちょっとテリー伊藤さん似。かなりインパクトのある存在です。もうひとりはイギリス人、こちらが「わかりやすい」英語で色々な補足説明をする役です。
学校で習った人体図の挿絵で内臓の位置は知っていても、知識で「歳を取ると骨が弱くなる」といったことはわかっているつもりでも、普段は見ることのできない身体の中身を見ながらそれを確認することは圧倒的なリアリティがあり、全体としては非常にまじめな番組です。解剖を見ることも、全裸モデルの登場も、当然のものとして誰もつっこみません。が、その「当然」感が、もちろん私にとっては当然ではないので、ほんとびっくりしました。
イギリスにはこれまでもちょくちょく解剖やら手術やらのドキュメンタリー番組があり、ちゃんと見たことはないのですが(生々しすぎて私には見れません)、イギリス人ってこういうの好きなのかなーと疑問に思っていました。でもこの番組の存在を知り、「やっぱ好きなんだ」との確信を少し強めました。
② I, Samurai(BBC4) 1月9日
BBC4はデジタル放送のチャンネルで、1〜2月は日本を含めたアジアに関する番組が多くなっています。その中のひとつ、このドキュメンタリー「I, Samurai(俺、サムライ ←こんな訳でいいのか自信がありませんけど)」は、普段は西洋美術が専門のイギリス人の評論家が、昨年大英博物館の「刀」展(基金も助成しました)を見たのをきっかけに「サムライ」の世界に関心を持つようになり、実際に日本へ行って色々見て体験するという内容でした。まずイギリスで剣道をちょこっと体験し、東京では刀や鎧を売っているお店や刀職人の工場を訪れ、京都では竜安寺の石庭で禅の心や、武士の嗜みとしての茶道を体験。また東映映画村の時代劇セットでは武士の格好をさせてもらい(かつらまでつけてもらって完璧な武士に)、殺陣をつけてもらって寸劇にも挑戦。刃文(というのでしょうか)に雲や桜を見るという「サムライ」の世界は、戦いとアートが背中合わせになっていた、と言っていました。
ところで、イギリス人の手にかかると、「サムライ」は「ミュライ」(サにアクセント)になってしまうということを初めて知りました。あと、イギリス人から見れば日本的な雰囲気を醸し出すからでしょうか、BGMに多用される尺八の演奏。日本人の感覚で見ると映像と音楽が全然合っていません・・・。でも番組最後のテロップと同時に流れていたのは、何かの時代劇の主題歌だったようです。音の感じからして70年代の曲なのでしょうか、それはなかなか意外な良さがありました。
③ Step Families(BBC1) 1月18日
子連れ再婚してできた家族が、カウンセラーのアドバイスを受けながら家族の絆を深めてゆく様子を追ったドキュメンタリー。私が見たのは、10代前半の娘3人を連れた母親(バツ2)が3度目のご主人といる家庭でした。「今度のお父さんもまた自分たちを捨てるかもしれない」という恐れから、新しいお父さんになかなか心を開けない長女。複雑な家庭事情に加え、思春期特有の反抗期や、(カウンセラー曰く)母親の過干渉、父親も子供たちと積極的に関われないなど、色々な問題が複合的に重なって本当に大変そうなのですが、だんだんと連帯感を強めていきます。この父母はなんと一目ぼれ同士がスピード結婚しちゃったのだそうで(失礼ですが外見はいたってフツーなふたりです)、子供たちは結婚式にも出席していませんでした。が、家族の絆を確認するために、娘たちを介添え役に仕立ててもう一度結婚式を行います。誓いの言葉に続いて、父親は娘3人に向けたメッセージも読み上げます。これを聞いて母親も娘たちも涙、涙。結婚式会場に入ってくる家族の表情が素晴らしかったんですよ、みんな幸せに輝いていて。私も「うるっ」ときてしまいました。
それにしても、こういう番組がシリーズとして成り立つこと、そしてそれに堂々と登場する精神って、なんというか、さすがですよねー。