ストリングラフィー

stringraphy

基金が主催の「ストリングラフィー」公演を、サドラーズ・ウェルズ付属の小劇場Lilian Baylisにて観る。イギリス国内4ヶ所を巡回。同僚の竹川さんがその準備のために途方もない苦労と努力をして迎えた本番だ。すでにノリッジカーディフを回ってきていて、わりと好評だったと聞いている。
ロンドン事務所の希望で派遣してもらった公演団だが、実は前所長の肝煎りだったため、私自身は「ストリングラフィー」の何たるかをまったく知らなかった。そのくせ人には「バレーボールのネット状に糸を張って、糸に紙コップをつけて音を調節して、音楽を弾きながら踊るパフォーマンスらしいですよ〜面白そうでしょう?」などと説明していたが。
実物を見て驚嘆した。世の中にはこのような音楽の形態があるのかと。百聞は一見にしかずとはこのことだ。そして水嶋一江さん率いるアンサンブルの女性たち5人の演奏・演技は、観るのが初めての私でも、プロフェッショナルの域に達していることがわかる。
何となく、琴のように糸をはじいて音を出すのかと思っていたが、はじくよりもなでるというかこするほうがメインのようだ。いわばバイオリンの原理か。そして想像していたよりもはるかに大きな音が出る。音階はもちろんのこと、鳥のさえずりや蛙の鳴き声なども可能で、全部で10種類の音が出せるのだそうだ。
3人から5人で別々のパートを弾き、ひとつの曲になる。チェロのように聞こえる時もあれば、アコーディオンの音にも聞こえたり、に近いと思う時もある。『赤とんぼ』の演奏はメロディがハーモニカの音に聞こえて、昔の日本の秋の夕暮れを連想させる。(こういう郷愁を誘う音楽をBGMにしたコマーシャル、あったような・・・何だっけ・・・キャラメルコーン明星チャルメラ・・・?とひとり雑念を巡らしてしまった。)
単に曲を演奏するだけでなく、どうやって音を出すのか、音階を作るのか、という説明も入る。「グリーンスリーブス」「スキヤキソング」など、イギリス人にも馴染みの深い曲も取り入れ、まったく飽きさせない構成になっていて、よく考えられているなぁと感心。そして身体全体を使っての演奏で息も弾み汗もかくのではと思うのだが、何事もなかったかのような涼しいお顔でMCのマイクを握る水嶋さん。さすがこの楽器を発明し、12年も前から続けていらっしゃるだけのことはある。
客席も9割がた埋まり、誰もがこのユニークな音楽にひどく感心していたようだ。その証拠に、アンケートに書き込む姿がとても多かった。どんな反応なのか楽しみだ。
何より、強行軍の日程にもかかわらず頑張ってくださったアンサンブルの皆さん、文字通り駆け回って準備にあたってきた竹川さんに感謝したい。
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