ピカデリーライン全面復旧

Picadilly Line

この日、7.7以降部分的に閉鎖されていた地下鉄のピカデリーラインが全面開通した。
7.7からちょうど4週間目のこの日に何が何でも間に合わせるのだと、それはそれは必死の突貫工事で仕上げたらしい。実際には事件から2週間は現場検証に費やされたので、工事期間は2週間だったという。
正直言って、そんな突貫工事をやってセンチメンタルな期限にあわせるより、長くかかってもいいからこの際きちんとした工事をやってくれても良かったのに、と思う。

ご承知のとおり、7.7の時は、キングス・クロス駅から南隣のラッセル・スクエア駅に向かう途中だった車両が爆発した。爆発があったのがたしか先頭車両だったため、救出作業も私たちのオフィスの目の前のラッセル・スクエア駅が舞台となっていた。私たちはおよそ3週間、駅前を通ることすらできなかった。

翌5日の朝、1ヶ月ぶりに自宅近くの駅から会社のあるラッセル・スクエアまで乗車したが、電車に乗り込んではじめて、7.7以降最も緊張している自分に気がついた。
なぜだろう。
さすがに再び同じ路線で爆発があるのはさほど心配ではない。それはどの路線に乗っていても同じだから。考えてみると、私の緊張の原因は、ラッセル・スクエア駅前に漂っている(と思われる)不穏な「気」なのではないかと思い当たる。別に私は霊能者ではない。ただ昔からある種の気配に敏感になる時がある。これよりも1週間ほど前、駅前の通りが久しぶりに通行できるようになったので駅の並びにあるサンドイッチ屋に久しぶりに行こうとして、結局通りの途中で回れ右をしてしまった。怖くてそれ以上前に進めなかった。

緊張はラッセル・スクエアに近づくほど高まる。私の緊張と不安を煽るかのように、車両は乗客が少ない。1本前の電車との間隔がほとんどなかったせいというのもあるが、それにしても停車する駅のホームにも人気がなく不気味に静かだ。そしてラッセルに近づくほどに乗客も降りてゆき、ラッセル手前では自分ともうひとりしかいなくなってしまった(☆写真はその時に撮った車内)。朝の9時台である。もっと人がいて当たり前なのに。

ラッセル・スクエアで降車し、階段を上り、エレベーターに乗って地上へ出る。意外にもこのへんは大丈夫だ。どうも駅前の通りにだけ私の怖いと思う原因があるようだ。

そんなこともあり、私はピカデリーラインが開通してからも、できるだけラッセル・スクエアからは乗らないようになった。

すみません、別に怖い話をしようと思ったわけではないのですが・・・。でも、きっとしばらくすればだんだん慣れて気にならないようになるんじゃないかなと思っています。