ジュリアス・シーザーに見る熱演

翌日からのニューヨーク旅行の準備も完了していないのに、夜バービカン劇場で『ジュリアス・シーザー』の公演を見た。前々からチケットを購入していたのは、イギリスに来てから、シェークスピアといえば『マクベス』しか見ていないので他のものも見たかったということと、今回は役者陣が充実しているところに惹かれたせいもある。といっても私は役者のことも全然詳しくない。マーク・アンソニー役をラルフ・ファインズが演じるというので惹かれたというのが正直なところ。
シェークスピアは実に様々な時代設定で上演される。特定の時代を超越して抽象的な設定で演じられることもある。それは衣装や舞台装置に反映される。今回は「現代」の設定だった。議員は背広、民衆はロンドンの下町からそのまま連れてきた感じ、戦争のシーンは迷彩服。騒ぐ民衆を押しとどめるのは今のイギリスの警官と同じ蛍光色のチョッキを着た警備員。しかし、台詞だけは原文の昔の英語のままだ。だから本当は聞いていても一言一句理解できるわけではないのだが、だいたい筋がわかればいいや、くらいの気持ちで見ていた。
平日で、終演は11時を過ぎることがわかっているにもかかわらず、バービカン劇場は満席だった。今回の公演は評判が良いらしい。たしかに見ていて飽きなかった。
ただ、バービカンの客席は座り心地が良くなくて好きではない。古いせいなのか。おまけに真ん中に通路がなく横一列が非常に長いので、中の方の席になると出入りも億劫になる。そんな私のお気に入りは、前から3〜5列目のいちばん端の席。出入りは楽だし、疲れたら横の壁にもたれられる。舞台にかなり近いので臨場感があり、端だから見づらいという感じは全然しない。それに真正面ではないので役者の唾が飛んでくることもない。
そうなのだ。熱演する役者の多くが思いっきり唾を飛ばしながら台詞を言うのだ。それが照明にあたって、さながら黒い壁の前で霧吹きをシュッとした時のように、実にくっきりと見えてしまう。『マクベス』を見た時にも気になった。今まで日本でもイギリスでも演劇を見て役者の唾が気になったことは一度もなかったのに。ラルフ様とて例外ではなかった。他の人は気にならないのだろうか。私は唾が気になって時々台詞を追うことを忘れてしまうほどだったのに。
まぁ、唾などどうでもいい。想像していたよりずっと面白く、長いという感じがほとんどしなかった。今度はグローブ座やストラットフォード・アポン・エイボンにも出かけて行って、シェークスピア作品を見てみたい。
ちなみにオクタビウス役の若い俳優さん、名前をOliver Kieran-Jonesというそうだが、この人がとってもハンサムだった。オーランド・ブルームのように、近い将来映画にも出て有名になれるんじゃないだろうか。