Cliveden Houseという贅沢

クリーヴデンのお屋敷を庭から望む

昨日の日記に載せた写真の続きで、2週間前に訪れたCliveden Houseクリーヴデン・ハウスについて。
ちょうどイースター連休の最終日、友人と1泊で訪れたクリーヴデン・ハウスは、それはそれは素敵な空間だった。
もともとは1600年代に貴族の狩猟用別荘として建てられたお屋敷である。1800年代末には、当時最も裕福といわれたアメリカ人William Waldorf Astorに買い取られ(ニューヨークのWaldorf Astoriaホテルもこの人が作ったのでしょうか)、上流社会の社交の場として世界中の政治家や文化人が訪れている。そんな歴史のある場所が、往年の建築や内装や自然景観を大事に保存しつつ、現在はホテルとして使われている。
ロンドンのパディントンから汽車で約40分。Burnhamバーナム駅から更にタクシーで5分ほど行くと、広大なお屋敷の入り口が見えてくる。昔はこの道を馬車で乗りつけたのだろうか。
とにかくいちばん気に入ったのが広々とした玄関ホール。ほの暗い室内、マホガニー色の壁と家具、手前の大きなフラワーアレンジメントと奥の暖炉(現在も使用中)を中心にゆったりと配置されたソファ。家具も絵画も年季が入っているが、手入れが行き届いていて少しも古臭さを感じさせず、上品に歳を経た感じが何とも落ち着く。ハリボテでない本物の重厚感が漂っている。そして、そんな贅沢な空間にゆっくりと身をうずめる快感・・・!
私たちが宿泊した部屋は、お屋敷の中ではかなり新しく、1990年代に客室として改装されたようだ。広々としていてお屋敷の雰囲気によくなじんだ内装になっていた。
Astor氏が妻にプレゼントしたというプールは今でも使われている。横には室内プールもあり、ジャグジーにサウナ(ドライとスチームの両方)、コーヒーが飲める部屋まで付いている。
ホテルの周囲の土地も敷地の中。全体をナショナルトラストとして保存している。広大な庭、小道でつながった別邸(ここにも宿泊できる)、テムズ川に沿って開かれた緑地。アフタヌーンティーをいただいたホテル2階のテラスからは、庭の植え込みで作られた幾何学模様と、テムズ川と、遠景にのどかな田園風景を楽しむことができる。
到着した日の日中は汗ばむくらいの陽気で、とにかく気持ちの良い場所だった。夏場に来るとさぞかし爽やかであろうと思う。

気持ちが良いのは場所だけではない。スタッフが素晴らしいのだ。そう、無理なくプロフェッショナルな感じ。だからというわけではないが、非イギリス人が多かったのはなぜだろう。親切で、押し付けがましくもなく、まるで、私は知人のお屋敷に遊びに来ていて、知人のお抱え執事だったらこういう風に接してくれるのかな、と思えるような、絶妙の距離のとり方をしてくれるのだ。(ああ、そんな知人、実在してくれたらいいのに〜。)
それに、滞在客は、子供連れもいたけれど全体的に年齢層が高め。もともとはお値段が相当はるということもあり、周囲には自然以外に遊ぶ場所もないので、若者が競って集う場所ではないのだ。ということは、ただでさえ若く見られるジャパニーズ、友人と私はかなり若輩者に見られていると思うのだが、少しもぞんざいな扱いは受けない。
もっと感激したのは、「お昼も抜いてきたし、アフタヌーンティーしよう!」ということになって、「お茶をいただけるのはどこですか?」とスタッフに尋ねた時。
「どちらでも結構でございます。お客様がおかけになった場所に運んで参りますので。」
なんともニクイ答えじゃありませんか!それで前述のとおり、テラスを指定したわけなのです。
執事といえば、アメリカ人に買われたイギリスのお屋敷に勤めるバトラー(執事)が主人公の『日の名残り』を思い出す。アメリカ人に買われたというあたりも似ている・・・。

ホテル内のレストランでいただいた夕食はフレンチ。意外にもワインリストが充実している。アフタヌーンティーのスコーンやケーキも美味しかったし、ここの食べ物はすべてレベルが高かった。お腹が苦しくて、最後のデザート、チョコレートスフレを完食できなかったのが心残りだった・・・。

ところで、このようにゴージャスな場所に正規の値段で泊まったわけではありません。友人が格安の宿泊パックを見つけてくれたのだ。1部屋125ポンド、ロンドン市内でもめったにない掘り出し物である。感謝感謝。
いつかまた訪れてみたい。最低2泊はできるといい。歳を取ってから来るのも、またいいに違いない。
ウェブサイトはこちら→Cliveden House | Luxury Country House Hotel near London