日本人同士で文化交流をする必要?

先日、さる外資系大手金融機関にお勤めの日本人男性に会った。年齢は30台前半と思われる。日本人であることがまったく優遇されない環境でバリバリと働いていらっしゃる様子。さぞかし優秀な社員に違いない。年収1億などという異空間の人となるのもそう遠くないのかもしれない。
しかし、会話の中でその人はさらっとこんなことを口にした。
ロンドンにいるのは、ビジネスマン・弁護士・医者(※)か、観光客か、あと学生くらい。製造業もないから労働者もいないんだよね。」(※それまでの会話の文脈から、ビジネスマン・弁護士・医者等の大金を稼ぐ人というニュアンスだった)
はて?
お金持ちか観光客ではなさそうな人も町でたっくさん見かけるし、ロンドン東部はいわゆる下町だし?はてなマークが頭の中を飛び交った私が問い直すと、
「でもそういう人はZone 1*1 には住んでないでしょ。ロンドンってZone 1のことだよ。」
と言った。当然でしょそんなの、と言わんばかりの口ぶりである。
そんな解釈初めて聞いた!ロンドンのエリート金融マンの感覚ってそんなものなのかもしれないけど、そうだとしたら恐ろしい。シティ(金融街の呼称)の中だけがすべてなんだろうな。そうじゃない人もいると思うけれど・・・。
すると追い討ちをかけるようにその人はこう言った。
「だって、ゾーン1より遠いところ、行かないでしょう ?」
なんと!?
「え?行きますよー。この前もゾーン3にある美味しいお寿司屋さん行きましたし。郊外には大きい公園とかもありますしね。」
食事以外にも、ギャラリーを見に行ったり、IKEAに買い物に行ったりと、ゾーン越えをすることは何もめずらしくない。
・ ・・と反論したものの、まったく話がかみ合わない。自分のコミュニケーション能力の欠如なんだろうかと自分に対して自信を失いそうにさえなった。
お金がすべての世界で働き(本人談)、同じ価値観の人だけがいる会社に籠もっている時間が長くていらっしゃるせいなのだろうか(本当に働きづくめらしい)、外国人以上に「異文化圏の人」という感じがした。別に金融機関に勤めている人に生まれて初めて会ったわけではない。大学時代の友人の中には邦銀・外資を問わず金融業界にすすんだ人も多いし、色々な話を聞いていたつもりだった。だから、そう、日本人に対してカルチャーショックを受けたことに自分で驚いた。
国際文化交流もさることながら、同じ国の人同士でも異文化交流が必要なのではないだろうかと思ってしまった。

*1:ここでいうゾーンZoneとは、ロンドンの地下鉄の運賃区間のことで、中心の1からドーナツ型にエリアが広がってゆき、最も遠いところでゾーン6。そのまま、場所の目安を説明したりすることにもよく使われる。ゾーン1はロンドンの主だった観光名所やビジネスの中心がすべて結集している。ちなみにフルハムアーセナルなどのサッカースタジアムはだいたいゾーン2に、ヒースロー空港はゾーン6にある。