ブレア時代を振り返る

BBCで、トニー・ブレア首相時代の10年間を振り返るドキュメンタリー番組を放送していました。
途中から見たので全体の話はわかりませんが、トニー本人のほか、ブレア政権時代の閣僚、報道官、野党党首、またアナン・コフィ前UN事務総長や、なんとブッシュ米大統領までインタビュー出演。
任期終盤、人気がどんどん落ちていった頃、彼はどんどん世論から離れ、自分の考えだけを中心に物事を決定するようになった、そして意見が聞き入れられなくなった閣僚はじめ労働党も彼についていけなくなった、ということが、閣僚だった面々の口から語られていたのは興味深いです。しかし反対にトニー自身は、自分の人気が落ちていくに従って、むしろ人気があった頃よりも自分に自信が持てるようになった、と語っていました。
ひとりの首相の成果、その活動の功罪は、もっと時間が経ってみないと本当の判断はできないのかもしれません。野党・自民党の党首が、トニーは内政でめざましい成果をあげたが、それらがすべて霞んで見えなくなるくらい、イラク参戦はものすごい汚点である、ブレアの後世の評価はイラクに参戦した首相という一点だけになってしまうだろう、と言っていました。少なくとも今の時点ではそのように考える人は少なくないのではないでしょうか。
しかし番組を見ていて、こういう番組は日本では作れないだろうなぁと思いました。総理大臣の任期が1〜3年でコロコロ変わってしまう日本では。10年間というまとまった時間をひとりの人間が首相として務めることによって政治に継続性が生まれ、ひとつの「時代」として色づけがしやすくなる、評価しやすくなる。良いこともやれば間違った判断をすることもあるけれど、この人に国の舵取りを任せてみようじゃないかと一度決めたら、それを10年も続けることを選択してきた英国。なんというか、度胸の良さというか懐の深さというか、そういうものがあるように感じました。この番組を見ながら、この国に対して(久しぶりに)ちょっと尊敬の念を持ちました。
今ちょっと、戦後から現在までの歴代首相の人数を調べてみたところ、英国は13人、日本は29人でした。しかも日本は第1次内閣、第2次内閣・・・と分かれていたりしますので、閣僚の任期は更に短い場合が多い。私の理解では、英国は首相だけでなく閣僚も長い人は長いですから(特別な政治的事情があるのかもしれませんが、ブレア政権期間中、ゴードン・ブラウンは丸々10年財務相でしたし、ジャック・ストローは5年間外務大臣でした)。