The Bee

『The Bee』という舞台の千秋楽に行ってきました。
野田秀樹さん作・演出で、ご自身以外はすべてイギリス人の俳優・スタッフとともに作り上げた舞台です。基金も助成しています。
イギリスの各紙でも取り上げられ、なかなか好評なようで、私が見た回も満席。客席の日本人:イギリス人比率は4:6くらいだったでしょうか。Soho Theatreソーホー・シアターは小さいながらきれいで居心地の良い劇場で、私が座った席は、舞台の真横、舞台はせいぜい20センチくらいの台なので、とても近くで見ることができました。
キャサリン・ハンターという女優さんがMr.Idoというサラリーマンの役。それ以外は野田さん含め3人の男性が、レポーター、刑事、テレビ番組のシェフなどへとくるくる役を変えていきます。鉛筆と輪ゴムも重要な小道具。輪ゴムはレポーターのマイク、立ち入り禁止のテープ、お蕎麦(?)、鉛筆は、鉛筆や箸として、後半は子供や妻の「指」として使われていきます。
Mr.Idoが帰宅すると、殺人犯が奥さんと子供を人質に立てこもっていることを知ります。犯人は、自分の妻と子供に合わせなければ、人質を殺すと言っている。なかなか進展しない警察の対応に業を煮やして、Mr.Idoは犯人の妻(野田さん演じる)に直談判に行きます。成り行きで、今度はMr.Idoが犯人の妻と子供を人質にたてこもるという奇妙な展開に。Mr.Idoも、最初の立てこもり犯も、自分の家族を連れて出てこいという相手の要求を受け入れず、ここからだんだん狂気の世界へと入っていきます。子供の指を切り落とすシーンは、本当は鉛筆を折っているだけなのに異常なほどリアルで、そのせいなのか途中で席を立ってしまった女性もいました。
キャサリン・ハンターは、前回野田さんが「赤鬼」をやった時のキャストのにも出演する予定だったそうですが、体調不良でキャンセルになったとか。
イギリスで舞台をやることの苦労を野田さんが書いた文章を以前読んだことがありました。劇団の慣習や、スタッフの領分、何もかも日本とは異なっていて、文字通り異文化社会で舞台をひとつやることには相当なパワーが必要でしょう。果敢にも挑戦し続けて、今回は成果があったのではないでしょうか。それと、野田さんは、想像していたよりずっと上手にイギリスのアクセントで話していました。