あるカップル

今晩、帰宅するために地下鉄に乗った時のこと。
私が乗ったのと同じドアから飛び乗ってきて、弾むように楽しそうに座席に座ったカップルが一組いました。普段どおりのそのそと乗り込み座ろうとしていた私と、そのうちのひとりが軽くぶつかり、その瞬間男性の方と目が合いました。けれども、世界は自分たちを中心に回っていると思っている若くて青いカップルという歳恰好でもなかったせいか(・・・なんか僻んでいるんでしょうか)、目線で謝ってくれたせいか、そんなに嫌な気分にもならず、「いいのう、盛りあがっとるのう」そんな程度に思い、特に何事もなく斜めに向かい合って、彼らと私はそれぞれ座りました。そのカップルは本当にラブラブで、座っても手をつなぎ、楽しそうに語り合っています。
そうして2駅ほど過ぎた頃、何気なくそのカップルの女性の方に目をやり、彼女のあごからのどにかけての線がいやに非女性的、いや男性的であることに気付きました。そして、初めて理解したのです。ふたりは、どちらも男性でした。
私のロンドンにおける限られた行動範囲の中では、実は同性カップルを見かけることは(少なくともこんなにあからさまにラブラブしている人たちに遭遇することは)滅多にありませんでした。それに私が知っている限り、最近のゲイはどちらかというとマッチョの傾向が多いような気がするのですが、このカップルはふたりとも小柄で、たぶん私なんかよりか弱いかもしれません。年齢は、おそらく30代後半から40代前半。
なんだか色々な意味で新鮮でした。

ゲイといえば、昨年12月21日、イギリスでは同性の婚姻を正式に認める法律が施行されました。施行日当日に挙式をあげたカップルは686組、そのいくつかはメディアにも取り上げられていましたし(もちろん素人さん)、エルトン・ジョンも当日に結婚式と盛大なパーティを開いていました。同性の婚姻はcivil partnershipと言うそうです。イギリスでも1966年までは同性愛が法律で禁止されていた(anti homosexuality laws)というものがあったそうですが、それから40年。私自身は同性と結婚することは考えられませんが、個性が尊重されるイギリスらしくていいなぁと思いました。
ちなみにエルトン・ジョン&デイビッド・ファーニッシュ夫妻は、結婚式ではふたりともびしっとスーツでしたが、パーティではエルトンがウェディングドレスも着たみたいですよ。小太りエルトンがドレスにヒールまで履いた姿は、別に見せてくれなくて良かったと思いますが・・・。
なぜこんな数字や豆知識が出てくるかというと、その12月21日の新聞「Metro」を取っておいてからなんです、どんな風に取り上げられるのか興味深いなと思って。Metroの論調は揶揄したり批判したりするものではありませんでしたが、見出しにはPinkという単語を使っています。Pinkというのはもちろんピンク色のピンクのことですが、例えばas gay as pink inkというと「見るからにオカマっぽい(差別語)、明らかにホモで(差別語) 」(by英辞郎)という意味になるそうで、肯定的な意味合いではなさそうです。従って、本当はゲイの人から見れば快い見出しではないんじゃないかなぁと思うのですが、どうなんでしょう。