花市と、巨人と玩具と、エイサーと

エイサー

昼過ぎ、Colombia Road Marketコロンビア・ロード・マーケットへ。ハックニーとショーディッチ、そしてリバプール・ストリートに近いコロンビア・ロードに沿って立つこのマーケットは、生花や鉢植えの市場だ。開くのは毎週日曜の朝8時から午後2時まで。前々から行きたいと思っていたものの、何もない日曜は昼頃まで寝て過ごしてしまう元来怠け者な私、なかなか行くことができなかったが、今日こそ一念発起・・・とはいえ、現地に到着したのは1時半過ぎ。まだやってるかな〜、まぁ、場所だけ確認して次回(っていつだよ!?)の参考に〜、と思っていたのだが、大丈夫、店仕舞いがやっと2時過ぎに始まるような感じだった。
切花専門の店、鉢植え専門の店、ハーブ中心の店、大型鉢植え専門の店。様々なお店が出ている。見ているだけでも楽しいし、同じ種類の花や鉢植えでもお店によって値段や大きさも違い、比較も楽しい。そして、私の到着した頃は、閉店に向けてどの店も値段を下げ始めたところだった。図らずもちょうど良いタイミングに到着した。ラッキー。
今度ゆっくり見てから買おうなどと思っていたが、「鉢植えどれでも6個で5ポンドだよ!」だの「切花3束で3ポンド!」といった掛け声に囲まれると、俄然やる気が出る。閉店15分前のデパ地下における心理状態に近い。
もともと、リビングの本棚の上と台所の食器棚の上に緑のものを飾りたいと思っていた。賃貸契約上、壁に穴を開けられないので、目線より高い位置にものを飾るということがなかなかできない。結果、テーブルや窓際にばかりモノを置かざるを得ないのだが、もうちょっとバランスのとれた部屋にしたい。考えた末、本棚や台所の食器棚の上に空きスペースを利用することにした。そのためには、飾るものが最低でも4個はほしいのだ。
そこで今回は、2種類の鉢植えを2つずつ購入。ひとつはPernettya Mucronataという、桃色の実がたくさんついたもの。日本では「真珠の木」の愛称がついているそうだ。もうひとつはChoisya ternataという、パキラを小さくしたような葉がついたもの。白い花が咲くらしい。大事に育てたい。
鉢植えを買った勢いで生花も買うことに。活きの良い鮮やかなピンク色の花と、白いケイトウのような花の束をあわせて5ポンドで購入。これでもイギリスでは安いほうだ。
あぁ楽しかった。少し大きい観葉植物もほしいし、また来よう。
ただ、鉢植えを買う時の最大のジレンマは「帰国する時、どうしよう」である。それまで元気良く生きてくれたとして、誰かに引き取ってもらうしかないが、このジレンマがあると何となく購入も慎重にならざるを得ない(4つも買っておいてから言うのも何だが)。

鉢と花を家に置きに帰ってから、今度はナショナル・フィルム・シアターNational Film Theatreへ。ここでは現在、増村保造特集を上映中。この特集上映には基金も助成している。NFT増村特集サイト→http://www.bfi.org.uk/incinemas/nft/seasons/masumura/
以前、映像担当の部署にいて、海外での増村特集のハンドリングも担当した時期があったにもかかわらず、実際の作品はほとんど観たことがないのが負い目だった。今日観たのは『巨人と玩具』。このフィルムを購入した時はちょうど視聴覚課にいたよなー、と思い出す。日曜の夜6時過ぎ、お客は80人程度というのは悪くないのかもしれない。
冒頭に基金フィルムライブラリー所蔵であることを示す映像が。このアニメーションは、70年代のことだと思うが、日本のアニメーターの大御所・岡本忠成氏に制作していただいたものだ。基金の旧ロゴマークをモチーフにした数秒間のアニメーションだが、ロゴマークが新しくなっても、このアニメは残したい・・・。だって、もったいないじゃない。
懐かしのポヨポヨ(その動きから、この言葉がピッタリくるように思う)を見届けた後の本編。冒頭のスタッフ・キャスト名を出す映像がとてもスタイリッシュなことに驚きを感じる。キャラメルの売り上げにしのぎを削る「ワールド製菓」、その宣伝部の課長と若手社員を軸にストーリーはすすむ。笑わせる場面も多く入れつつ、しかし社会批評は極めてストレートだ。なにしろ、働きすぎで身体を壊し精神的にも追い詰められた課長に「ここは日本だ。日本にいる以上、上司の言うことを聞いて働き、競争に勝つしかない」というような台詞をドンと言わせてしまうのだから。
とても面白かった。もっと早く観ておけば良かった、と月並みな後悔をしつつ、海外でも更に公開されることを期待したい。

NFTを出た後は、そのままテムズ河畔へ。今週末はThames Festivalというお祭りを開催中で、今年はここに沖縄のエイサー・チームが招待されている。このエイサー来英も基金が助成している。テムズ・フェスティバルのサイト→The Thames Festival Trust's vision is of excellent art and amazing events in healthy river environments, accessible to all and enjoyed by all
エイサー・チームは、沖縄の園田青年会の精鋭が中心になっている。皆さんたしかにお若い。だが、毎日練習し、沖縄サミットでも実演したというのも納得が行く完成度の高さを感じさせてくれる。園田青年会サイト→ごめんね。このページはないの。
他にも実にたくさんのグループが練り歩きに参加している。最初はエイサーだけを見て帰るつもりが、次から次へとやってくる色々と違ったパフォーマンスが面白くて、結局終点直前のところに1時間半立ちっぱで見てしまった。とりわけ目立っていたのが、ブラジルのサンバ隊だろうか。あの身体の動きは、ブラジルで育って自然に身につくんだろうなぁ、と羨望の眼差しで超スタイルの良いお姉さんたちが激しく踊る姿を見る私。私の横にもブラジル人らしき人たちがいて、あのリズムを聞くとどうにも身体が動いてしまうらしかった。
エイサーは、なんと行列のオオトリだった。色々なグループがいる中で、いちばん伝統を感じさせるのが彼らだったと思う。それに動きがなんと統制されていることか。同じ日本人として誇らしく思い、同時に、あのサンシンの音、あの音階、あの発声、そうしたものにえもいわれぬなつかしさを感じて、もっともっと聞いていたいと思った。彼らの出番はこの練り歩きだけではない。昨日と今日、テムズ河畔で5回パフォーマンスをした後にこの2時間に及ぶ行列である。本当にお疲れ様である。
☆写真もそのエイサー。ブレブレでまったく良く撮れていないが・・・臨場感があふれているってことでお許しください。

エイサーチームが去ってまもなく、フェスティバルのフィナーレを飾る花火の打ち上げ。なかなかきれいだった。でも10分で終わってしまった。日本の花火大会がなつかしい。

というわけで、なかなか盛りだくさんの日曜日だった。