2012オリンピックはロンドンで・・・?NOT!

おなじみmind the gap

2012年のオリンピック開催立候補地の中で、パリに次いで有力なのがロンドンになったそうだ。

「ブレアが賛成しようとも、女王が晩餐会を催そうとも、私は反対だ」
というのが、おおかたの市民の声のような気がする。
私もそれにまったく同意する。

今日の地下鉄紙『Metro』のトップ記事は「ロンドンはオリンピックの栄光に一歩近づいた」というタイトル。国際オリンピック委員会が来月の開催地決定前に公表する最後のレポートの中で、「ロンドンは競技開催を受け入れる能力がある。ロンドンの交通は、オリンピック・パラリンピックの開催に必要な交通の要件を満たすであろう。」と評価したらしいが。
どこをどう見たら世界最大規模の大会を受け入れるキャパがあるというのか。
IOC視察への過剰接待は禁止になったとはいえ、やはりイギリス側が何かやったのではないかと疑ってしまう。視察中は女王主催の晩餐会も開催されてたしなあ。
それから視察前(だけ)、ロンドン市内の清掃を強化という付け焼刃もした。
しかし、IOCは各国の招致委員会や首相の発言だけではなく、市井の声、世間での評判も考慮に入れるべきだと思う。
オリンピックという巨額のお祭りがイギリスにもたらすであろうインフラ開発、商機、そして国民全体が包まれるであろう高揚感を期待するのはいい。しかし、同時に予想される交通機関の混雑、物価の高騰、そしてこの先何十年払いつづける税金、すべて直接にもっとも影響を受けるのは、一般の人々だ。
オリンピックのメイン会場とロンドン市内を結ぶ高速鉄道(気づいた時にはもう建設中)に投資する予算があるなら、既存の地下鉄路線を1本でも近代的なものに取り替えるような抜本的な改善をすべきである。たった3週間のイベントのために新しい線をひくより、一生利用し続けるロンドン市民へのサービスを第一に考えるべきである。

と、こんなに熱くロンドン市民を擁護するのは、やっぱりロンドンの交通事情がひどすぎると思うから。以前から比べれば良くなったという声もよく耳にするけれど、ロンドン市内の地下鉄やバスに乗るという行為自体が、だんだん気が滅入るものになってきた。
遅延・故障のない日はないし(「ただ今の運行状況:Good Service」って各駅でわざわざ掲示したりアナウンスすること自体がおかしい。裏を返せばGood Serviceではない状況が頻発するということだ。Good Serviceって、日本では『平常どおりの運行』にあたると思う。問題がないことが平常だから。しかしロンドンでは『問題が起きていないグッドな状態だよ』〔Northern線等に至っては『めずらしく何も問題が起きていない状態だよ』〕と言っているように思える。)
職員は態度悪いし(この前はホームに落ちていた空き缶を駅員が率先して蹴っていた。)
車内は汚いし(飲食ゴミや新聞が散乱。この衛生観念は未だに信じられない。)
車両は狭苦しいし(地下鉄は言わずもがな。最近のバスもなんでだか好きになれない。なんでだろうと考えると、センスのかけらもない車内の色使いが気に障るのではないかと思い至った。古いダブルデッカーは乗り降りのタイミングが自由で融通の利くところが好きだったのに、開放型の乗降口がEUの安全基準に合わないとかでどんどん姿を消している。)
そして、これは設備ではどうしようもないけれど、
乗る人たちのマナーが悪い
イギリスは行列の国とかいうけれど、そして日本で誰に言われもしないのにきれいに並ぶ姿もそれはそれで恐ろしいという見方もできるけれど、とにかくイギリス人は公共の乗り物の乗り降りがめちゃめちゃ下手である。我先に乗る降りる。自分及び自分の荷物が他人の邪魔になっているかもしれないという想像力がない。『混雑した車内ではリュックを前にかかえましょう』という日本での広告がなつかしい。車内飲食が全然OK。今まで見た「食事」は、バナナ、りんご、サンドイッチ、サラダのパック、ヨーグルト、ハンバーガー、フィッシュ&チップス。ポテトチップスやチョコバー系はもはや気にする内に入らない。そして食べた後や飲んだ後のゴミをそのまま車内に置いてゆく(これまでに目撃した例外:バナナの皮を新聞紙で包んだ上で置いていった男性、リンゴの芯をホームと車両の隙間から線路に落とした女性)。ビール缶の中身をこぼす、お酢のかかったフライドポテトをざばざばとこぼす。よって臭い。そういえば夜10時以降は酔った人たちが騒いで超うるさい。

うー、悪口はとまらない。
2012年、私はロンドンに住んでいないと思うが、ぜひロンドンが選ばれませんように。
いや、今の交通機関を全部入れ替えるということだったら応援してもいいな。

ちなみにMetro紙によると、現在名乗りをあげている5都市(ニューヨーク、モスクワ、マドリッド、パリ、ロンドン)のどこが選ばれるか、という賭けがあり、今のオッズはそれぞれ31倍、41倍、21倍、5倍、そしてロンドンは先週の11倍から6倍へあげた。


新聞ということで思い出したが、『神社新報という新聞をご存知ですか。発行所は神社新報社、住所を見ると代々木の神社本庁内になっている。今まで届いたことのなかったこの新聞が、初めて当事務所に届いた。どういうわけだろうか。
これがなかなかに興味深い読み物である。6月6日号のトップ記事は皇室典範に関する有識者会議 識者四人が意見を陳述』。これはやはり、この新聞の読者層にとって大きな関心事なのでしょう。他にも、6月下旬の天皇・皇后両陛下は戦没者慰霊のため「サイパン島行幸啓遊ばされる。」そのため神社本庁では「行幸啓安泰祈願祭を斎行するやう通達」したという記事。一般のメディアではもはや「遊ばされる」という丁寧語は使わない。そして「斎行」のような専門用語、「よう」→「やう」、「金は払う必要がないという理屈だって通りそうなものだ」→「金は払ふ必要がないといふ理屈だって通りさうなものだ」のように旧かな使い。通達に関する記事の横には、ご出発の前やご帰国後といったタイミング別の祝詞の例文が掲載されている。予備知識のない者には良う読めない。
全部で6ページの、短いながら独特の切り口の記事が満載の新聞をめくると、5ページ目に『常識の違ひ』というエッセイが載っている。出だしの一文が『イギリスと聞いて読者の方が思ひ浮かべるのはどのやうなものだろうか。』であったので注意が惹かれ、読んでみると、なんとロンドン大学SOASの修士課程にご留学中の神社本庁にお勤めの方が筆者であった。しかも今日の私のように、地下鉄で驚くことを色々と書いていらっしゃる。そして「国際交流活動とは価値観の異なる人々に自分たちの文化や考え方を伝える作業であり・・・」という、私のような職業に従事する者にとっても背筋が伸びるご意見を陳述していらっしゃる。
そうか、この記事があるからこその配達だったのか・・・?